【ネタバレ注意】なぜ彼女が帳簿の右に売上と書いたら世界が変わったのか？を読んでみた

他の記事で、一般的な書籍やマンガ等、昨今は簿記検定の導入に使用できそうな書籍が多く出版されていることを指摘しました。簿記や会計と言われて抵抗感のある方、「難しそう」と今まで関わってこなかった方に今一度簿記に振り向いてもらう、という書籍の社会的意義は非常に大きいものです。
今回は、乃木坂46・衛藤美彩×澤昭人『なぜ彼女が帳簿の右に売上と書いたら世界が変わったのか？』を読んでみました。

『なぜ彼女が帳簿の右に売上と書いたら世界が変わったのか？』
本作は、乃木坂46衛藤美彩が、会社の数字のプロ・澤先生に簿記・会計の講義を受けているうちに≪「複式簿記」が存在しないパラレルワールド≫に迷い込んでしまうという、SF仕立てのエンターテインメント・ビジネスノベルです。その世界で唯一、複式簿記を知る存在となったヒロイン・美彩が、簿記・会計の知識とスキルを駆使して事件を見事に解決していきます。
（引用 https://www.php.co.jp/nazekano/）
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さて、本書は複式簿記がない世界をモチーフに話が進められます。明治・大正を思わせるハイカラな時代の登場人物になれるのは、アイドルならではですかね。この本が俳優・松平健さんとの協力なら、江戸時代になるのでしょうか。
もしあなたが「家計簿みたいに入ったものと出て行ったものを順番に記録すればいいんじゃない？」とぼんやりと思っているとしたら、前半の1/3ぐらいを一読すればその疑問も解消することでしょう。そういった、簿記に関する素朴な疑問にストーリー仕立てで答えてくれます。 さて、今回は簿記講師目線で簿記3級とのつながりについて見てみました。
まず、複式簿記仕組みの概要がわかります。例えば、仕訳および、総勘定元帳への転記等。
簿記検定の講義の導入でする話がまとまっているのは簿記講師としても好感が持てました。「乃木坂の衛藤さんが出るなら簿記の話は聞いてみたいけど、イワサキの話は聞きたくない」という方は私の初回講義をこの書籍で代用してもらっても・・・。
その他、簿記3級に向けて本書で学べる内容をご紹介します。

・決算整理仕訳における売上原価の算定
これ、結構初心者の方は嫌がるんですよね。売上原価って何？って。でも簿記3級では必ず出題されます。

・主要簿、補助簿の違い
得意先元帳。補助簿は試験では問2で10点分出題されることがあります。メインの論点ではありませんが、複雑ではないので確実に得点したい論点です。

・試算表
本書では残高試算表を使用していますが、これがわかれば別の試算表のパターンも楽勝です。

・減価償却
これまた決算整理、問3あるいは問5で必ずと言ってよいほど出題されますが、実務経験のない方に説明するのが難しい論点です。

もちろん、簿記3級の試験対策には、本サイトで提示するような学習を継続する必要があるのですが、これまで簿記に触れたことがなかった方に乃木坂の表紙でジャケ買いしてもらえるとすれば、世の中に簿記をわかりやすく広めるという役割を十分に果たす書籍です。
私自身、簿記の学習のすそ野を広げる仕事ももっとしていかなければならないとわが身を反省しました。とは言え、本を出して表紙に自分が出ることはできないので別のやり方を考えます。

なお、簿記検定に直接関わらない内容ではありますが、ポピュラーな粉飾決算の仕組みや、株式会社制度、あるいは財務諸表を使った経営指標分析といった内容にも自然と触れられます。

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