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理系の人のための簿記〜理系と簿記の相性や活用方法〜

更新日:2024/11/11

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簿記を取得しようという方の多くが文系、特に大学で社会科学系統を専攻されてきた方が多いようなイメージです。確かに、簿記は企業の行動を表現したもので、学問の分類上は商学・経営学に分類されます。では、理系の方にとって無縁なものなのでしょうか。私は違うと思います。今回は「むしろ、理系の方に簿記を勉強して頂きたい」というお話を差し上げたいと思います。

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一般的な理科系の方と、簿記の関係

まず、理系の方は専門知識、いわゆる工学や化学等、自然科学の分野での知識が豊富で、その前提で企業に採用されているため、経理の話にあまり関心がない方が多いようにお見受けします。理科系の方と話していると、社会人になっても本質的に理系の学問と企業の動きのリンクをきっちり実感しておられない方が多いような気がします。もったいないです。

なぜ自分の自信満々の提案が受け入れられないのか、将来にわたって必ず企業に利益をもたらすと考える実験設備の投資がなぜ決まらないのか。もし、そのような悩みを抱えた経験がありましたら、簿記が解決してくれるかも知れません。

簿記ではその研究、どうみているか

研究開発・あるいは生産等の部署におられる方、あなたの今提案しようとしている案件は最終的にはどのような勘定科目で処理され、どのような利益に貢献するか、ご存知でしょうか。明確に自分の研究、使う費用が財務諸表(損益計算書・貸借対照表)に対して「ここから何年以内にいくらの影響を及ぼすからプラス」ということがはっきり言えない。あるいはその点を加味してさらに上に提案してくれる上司がいない、としたら企業という組織戦略の中では、ストップしてもいたしかたのないことです。

開発、生産の方が導入しようとされる実験施設等の金額は多額です。決裁を取るときも慎重に対応されるはずです。それは定額の費用であれば当期の範囲内ですが、膨大な設備投資であれば、時期以降にも原価償却という形で来期以降の損益計算書に影響を及ぼすからです。また、設備投資の結果、来期以降のキャッシュフロー管理も必要になります。

理系と簿記の相性

理系と簿記は、すごく相性がよいと感じています。
(個人的には理系と文系を分けるのはあまり好きではありませんが)理系の方は数式のようにきれいにつながっているものをよしとする印象があります。簿記は漢字が多いですし、企業というドロドロしたものが前提ではあるものの、簿記検定をはじめとする学習簿記については、曖昧さが完全に排除されています。簿記については世界各国の人が共通の内容で話すように努力しています。世界中で可能な限り統一した基準を用い、みんながわかるようにしよう、という話し合いが続けられています。元素記号が世界共通言語であるのと同様、借方貸方は世界共通言語です。
YES or NOのアルゴリズムで処理できるものなので、簿記は基本的に理系の方に向いているものだと考えています。

簿記と数式〜理系の活躍〜

簿記というと漢字が出てきて、ごちゃごちゃつまらない処理をしている、というイメージの方もいらっしゃるかと存じます。確かに、商取引がシンプルであった時は単純作業の集積だった時期もあったでしょう。しかし、昨今、企業の状況を正確に把握するため、計算式がどんどん入り込んできているのが特に上級簿記の特徴です。理系の方はむしろ簿記を極められる資質をお持ちだと強く感じています。例えば、設備投資の収益性を見積もるには複利計算の数式が理解できているのが前提です。来年の収益1万円は今の価値に直すといくらなのかといった割引の考え方です。

また、管理会計では統計学の手法も入り込んできています。(簿記検定のレベルでは統計学を理解していなくてももちろん大丈夫です)
金融商品の会計処理について言えば、デリバティブの評価などは数学の力が求められるでしょう。受験簿記ではそこまで複雑な数式は出てきませんが、実務で有価証券の会計処理を担当するのであれば、微分積分まではきちんと学んでおきたいところです。(金融商品の発達の歴史をかんがみれば、アメリカの航空宇宙技術者が出てくるのも、理科系の方と簿記の接点の将来像をにおわせるものであります。実際、高度なレベルで経理業務をおこなっている方の話を聞くと、有価証券の話題で、突然、微分方程式の話が出てくることもあります。)

良質な数式が共有されれば、それはすぐに世界の簿記のスタンダードになります。基礎理論は共有されるという意味で自然科学と共通する部分はあるでしょう。上級簿記での数式の複雑化が進めば進むほど、理科系の人が簿記で活躍する場所は広がりますし、今後もその傾向は続いていくと私は考えています。

理系の方が会議でしっかり発言するための簿記

ご自身の会社の経営者が理系という方もいらっしゃるでしょう。私も開発出身の社長のもとで働いた経験があります。では彼らが簿記を知らなかったか。答えはノーです。むしろきちんと勉強されておられました。もちろん、細かい情報には疎くても、損益計算書・貸借対照表、キャッシュフロー計算書においてどこが重要項目なのか、頭に入れて会議で発言していたのが印象的です。むしろ経営をサイエンスととらえていてくれて、シンプルでわかりやすかったです。

経理担当役員と営業担当役員を納得させるのは数字、それも簿記です。理系として長く仕事を続けることをお考えでしたら、必ず会計の知識は必要になります。特に30代・40代以下のお若い方は、可能な限り早めに簿記を学ぶことをおすすめいたします。

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